画像処理検査において、撮像した画像内に含まれる雑音を除去したり、特徴を抽出したりすることで、欠陥検出をより円滑に行うための基本処理を画像フィルタと呼びます。画像フィルタには「空間フィルタリング」と「周波数フィルタリング」の2種類があり、ここでは「空間フィルタリング」について解説します。
>ヴィスコ・テクノロジーズのメルマガで画像処理検査の最新情報を受信する空間フィルタリング(Spatial Filtering)とは、入力画像の対応する画素値だけでなく、その周囲の画素も含めた領域内の画素値を用いて出力画像の対応する画素値を計算する方法。「線形フィルタ(LinearFilter)」と「非線形フィルタ(Nonlinear Filter)」に分けられます。線形フィルタとは、入力画像をf (i, j)、出力画像をg (i, j) とすると、以下の式で表現できるものです。
ここで、h (m, n) はフィルタの係数を表す行列であり、フィルタの大きさは、(2k+1) ×(2l+1) となります。計算方法については下図の通りです。
同様の処理を、注目画素の位置をずらしながら画像全体に行うことで、フィルタリングは完了します。なお、この手順にあてはまらない処理を行う空間フィルタは、すべて非線形フィルタと呼ばれます。
▶︎ 参考:画素ごとの濃淡変換
厳密には「画像フィルタ」に含まれませんが、よく用いられる手法。
このフィルタは、フィルタの範囲内の画素値の平均値を出力画像の画素値とする「平均化フィルタ」で、この効果によりぼけた画像が得られます。ぼけた画像の濃淡変化は滑らかで、画像に含まれるノイズなどが軽減されています。また平均化フィルタには、単純な平均値ではなく、注目画素に近いほど大きな重みをつける「加重平均化フィルタ」があります。重みの分布を正分布の近似値とする場合、特に「ガウシアンフィルタ」と呼びます。一般的に、加重平均フィルタのほうがより自然な平滑化を行うことができます。
このフィルタでは、平均化フィルタとは逆に、画像のエッジを強調(先鋭化)することでシャープな画像が得られます。ただし、画像にノイズが含まれている場合、ノイズまで強調されてしまう場合があります。
>ヴィスコ・テクノロジーズのメルマガで画像処理検査の最新情報を受信する「エッジ」とは、画像中の明るさが急に変化する部分のことを指します。よって、画像中のエッジを求めるには、注目画素の隣の画素との差を観察することで導き出されます。
注目画素の両隣の差を出力画像とするフィルタを、「微分フィルタ」といいます。微分フィルタには、縦方向・横方向それぞれの画素値の差を出力するものがあります。
縦方向の微分フィルタでは縦方向のエッジが、横方向の微分フィルタでは横方向のエッジがそれぞれ強調されて出力されています。また、縦と横2つの微分フィルタの出力値をそれぞれΔ x, Δ yとすると、各画素におけるエッジの勾配を求めることができます。勾配の大きさと方向はそれぞれ以下の式で表されます。
勾配の大きさを画素値として持つ画像は、各画素におけるエッジ強度を示しており、方向に依存しないエッジ抽出が可能となります。
また、微分フィルタを2 回繰り返すことで、画像の2次微分を求めることができます。さらに、縦方向と横方向の2次微分の和は画像のラプラシアンとなり、方向に依存しないエッジ抽出が可能となります。画像のラプラシアンは右のラプラシアンフィルタの出力値と同じです。
「非線形フィルタ」について、1 例紹介します。平均化フィルタと同じく、ノイズ除去のために用いられるフィルタとして、「メディアンフィルタ」があります。平均化フィルタはある領域内の平均値を出力するのに対し、メディアンフィルタはある領域内の中央値(メディアン)* を出力するものです。
*中央値(メディアン):領域の画素値を明るい(または暗い)順に並べ替えたとき、ちょうど真ん中に位置する値
平均化フィルタを適応すると全体的に画像がぼやけてしまい、エッジが鈍ってしまうのに対し、メディアンフィルタは画像のエッジへの影響を比較的押さえながらノイズを除去することができます。特に、画像中のランダムなノイズ(スパイクノイズなど)を除去する際に効果を発揮するものです。
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